サンテックスを撃墜した男?

報道と反応

新聞記事の読み方 常識

 2008年3月15日(現地時間)、「サンテックスを撃墜した男が判明した」という意味の速報記事が世界中を駆け巡りました。その内容は三段構えで、
 1. Editions du Rocher 社から Jacques Pradel & Luc Vanrell 著の単行本が発売される予定。
 2. 本日発売された Le Figarao Magazine(週刊誌)に、その要約が載っている。
 3. それに依れば;
 サンテックスを撃墜したのは、元ドイツ空軍戦闘機乗り(現在88歳)の Horst Rippert 氏である。氏は、64年間の沈黙を破って、著者らに告白した。 ・・・・・・・・・・
 ジャーナリズムの常として、実際の記事は上記とは逆の順番で、見出しと内容が並びます。3の部分だけを読んで、「サンテックスを撃墜した男が見つかった」と信じ込んでしまった人は、新聞記事の読み方とその約束ごとが理解できていません。各紙は、Le Figarao Magazine の記事について報道しただけなのです。その内容が誤りであっても、報道した新聞に責任はありません。

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沸き起こりつつあるリッペルト批判

 予想していたとおりのことなのですが、リッペルトバッシングが起きかねない様相を呈してきました。1944.07.31、ドイツ側の記録と司令官達の記憶・連合軍側の交戦記録/傍聴記録(ドイツ空軍は、各機と基地とを無線で結び、会敵/交戦/戦果の状況をその都度、リアルタイムで交信していました)・その他に、該当空域での空中戦はないのです。【当日のドイツ空軍記録・当事者/関係者の証言自体はあります。例えば、Jafü Süd がプロバンス地方で、ゲリラ掃討のため12機を出動させて地上攻撃を行っています。記録その他が亡失したのではなく、記録はあるが「空中戦は記録されていない」のです。】
 批判は、これから急激に数を増すと考えられます。現時点で一番冷静で控えめな論調を示すページは、下記のウェブサイトです。【米語ではなく英語なので、誤解の余地ないしっかりとした文体は、とても読みやすく、お薦めのサイトです。】 (2008.04.08)

 NICK BEALE 氏:Ghost Bombers (06/04/08)(英語:下記4つは連続ページで、ページを読み終わっての最終段にある“Next”ボタンを押してゆけば順次切り替わります。)
 http://www.ghostbombers.com/various/saint-ex_01.html
 http://www.ghostbombers.com/various/saint-ex_02.html
 http://www.ghostbombers.com/various/saint-ex_03.html
 http://www.ghostbombers.com/various/saint-ex_04.html
 この Nick Beale 氏の克明なコメントで、早くも決着が付いたと思ってよいでしょう。氏の精細な結論は、今までなかった新事実(もちろん公式記録による確認)が出現しない限り、覆すことができない確乎たるものです。

 Lino von Gartzen 氏から Nick Beale 氏宛てに返事が届き、上記ページは 2008.04.25 に更新されました。Lino von Gartzen 氏からの返事の要点は:

 Update:
 On 24 April 2008, Lino von Gartzen kindly contacted me. He says that he has been trying for a year to get "more and more details to prove his [Rippert's] story" and continues:
 "As I found so many details "pro" Rippert and so few "contra", I was (and I'm still) sure for my part that this version of the last flight is the best hypothesis ever discovered for this case. No more, no less. …
 My aim was always sharing and exchanging information with serious working researchers, because only in this way can you get closer and closer to the reconstruction of history. Even uncomfortable questions by others may help more than just going in the desired direction."

 新たな証拠がないことは Lino von Gartzen 氏も認めています。それでも「細かな点でリッペルト氏を支持する結果は非常に多く、否定する結果は殆どない」と強弁しています。負け犬の遠吠えに過ぎない、と私は思いますが、最終的な結論は、9月に発売予定の彼の単行本待ちですね。
 拙速を承知の上で、現在(2008.04.08)国際的に最もまっとうな意見(一歩退いて言えば独断的な私見)を、単刀直入にお伝えしておくのが、このページをお読みいただいている皆さんに対する責任であろうと思います。
 リッペルト氏の「サンテックスを撃った」という言明が“記憶違い/虚言である確率 は ― 敢えて挑発的な言い方をさせて戴きますが ― 99%以上と言ってよいでしょう。否定的な証拠は少なからず揃っているのに、彼を支持する「客観的な証拠」がひとつもないからです。
 最終的な結論が出たというわけではなく、今後、今までになかった文書が出てくる可能性が無いわけではありませんから、当分は、この問題を気にかけ続けて戴きたいと存じます。

中立的(=疑問点の指摘)意見

 重要と思われる問題点を指摘している意見。(言い放しのブログ記事や論証性のない反論の類は取り上げません。)
 Charles Bremner 氏の意見【英語:読者からのコメント欄が重要】
 Gelassen in den Tod【Georg Bönish & Romain Leick 氏の寄稿。Der Spiegel 紙, 2008.03.22。ドイツ語。pdf ファイル。標題は「(サンテックスの)死を冷静に受け止める」「死神に身を任せて」の2様に解釈できる。】
  Jürg Altweg, Aus Erfahrung skeptisch: Französische Zweifel an Saint-Exupérys Abschuss durch Horst Rippert, FAZ, 28.3.2008, Nr. 32, S. 44. Laut einem Leserbrief von Prof. h.c. Dr. Hermann Schreiber in der Süddeutschen vom 7. April 2008, S. 33 unter dem Titel Freispruch von einer Gewissenslast gehörte Saint-Exupérys Maschine zu einer US-amerikanischen Staffel und trug nicht französische, sondern amerikanische Hoheitszeichen. Dieser Leserbrief bezieht sich jedoch auf die Meldung vom 17. März, nicht auf die ausführliche Darstellung vom 18. März. 【ヘルマン・シュライバー博士・名誉教授の意見(原報見つからず)要点:(サンテックス機は)自由フランス軍ではなく、アメリカ軍のマークをつけていた筈。(「3月18日ではなく3月17日云々」については、この文だけでは意味不明)】

リ ッ ペ ル ト 支 持 意 見

 反対意見ばかりでは不公平ですから、リッペルトを支持する意見も載せたいと思っていたのですが、感傷的な反応ばかりで、意見と呼べるほどのものを見つけることは非常に困難でした。
 やっとの事で、「どちらかといえばリッペルト擁護の色が濃い」意見;John Tagliabue 氏の寄稿(Internatl. Herald Tribune 紙 2008.04.10 付け)を見つけました。
 熱烈支持というわけでも、理性ゼロのロマンチックな感情吐露でもありません。淡々と事実を述べて、そこから引き出される解釈を提示します。英語が読める人は、(マスコミ系の記事はフットワークが軽いので)消え去る前に是非訪問して下さい。賛否いずれの立場に立つにせよ、冷静な意見とはどのようなものであるかの見本として、(上記の Ghost Bombers と共に)一読の価値があります。【ただし、John Tagliabue 氏自身が認めているとおり、「証言」を支持する物的証拠はひとつもありません。結論部分に述べられているのは、氏の「判断」です。】

John Tagliabue 氏の文章は首尾の整った記事(= 作品)ですから、これを和訳して掲載するのは、著作権に抵触します。全文引用はあり得ないので、残念ながら邦訳でのご紹介はできません。
 

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