U F O は U F O

空飛ぶ円盤ではない

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 「似非科学」を弄する人も含めて、理性的な議論・科学的な判断をできない人が、明らかに増加しています。
 「科学的なものに誤りはない」というのが、そもそも誤りなのです。「科学的」とは、単に「方法」「手段」が理性的であることを言っているに過ぎません。科学的に導き出された結論が実は誤りであった例は、掃いて捨てるほどあります。「結論が正しい」ことを保証するものではないのです。科学的推論といえども、その時々の知識の限界、利用可能な検証手段の制約から逃れることはできません。
 だからといって、科学的であることが無意味なわけではありません。まず第一に、「科学」と「科学的である」こととは違います。科学が万能ではないことを口実に、「科学的」なものの考え方を否定するのは、「食中毒という現実がある以上、食事をするべきではない」というに等しい暴論です。「食」という一字が共通であっても、このふたつに直接的な結びつきはありません。同様に、「科学」と「科学的」とは異なる存在(後者が前者を包含する)です。方法・手順としての科学的思考は、人類が築き上げてきた宝なのです。
 修辞上の説得力を、理性的な検証と誤認するようなことがあってはなりません。言葉の巧みさではなく、内容の確からしさを判断しなくてはならないのです。

 さて、「現時点での科学的判断」で、「非科学的」と退けざるを得ないもののひとつに「空飛ぶ円盤/宇宙人」実在論があります。このような主張を取り下げない人を、「理性的な判断能力が欠如している」と断定するするのは、極めてまっとうなことですし、そのような主張を繰り返す人々が黙殺され、議論の場から遠ざけられるのは、致し方ないことであろうと思われます。

UFO は存在する

 以下の欄をお読みいただけば判るとおり、UFO と呼ばれる範疇に属する「飛行物体」は「存在」します【「実在」するかどうかは別の議論になります】。そして、“UFO = 空飛ぶ円盤”ではありません。

空飛ぶ円盤なんて存在しない

 現時点における「科学的結論」は、「空飛ぶ円盤は実在しない」です。


 「食わず嫌い」で黙殺されてしまうことを避けるために、私事を述べさせていただきます。

 私は「空飛ぶ円盤」ファンでした。夢中になった時期があります。ある展示会でアダムスキー型の鮮明な写真を見て驚愕し、その感動を某航空マニア誌に投書した結果、その雑誌が「空飛ぶ円盤特集」を組むきっかけを作ったほどです。
 その当時、私は中学生になったばかりでした。朝鮮戦争は停戦を迎えておりましたが、郊外にアメリカ軍の飛行場があったものですから、始終航空機の爆音が聞こえておりました。家の中で爆音を聞いて、その機種を言い当てるほどの「飛行機オタク」(当時オタクという言葉はありませんが)だったのです。聞き慣れない爆音で外に出て、当時最新鋭であったカットラスという米海軍機が、市街地直上であるにもかかわらず、2機で円弧を描きながら垂直旋回の模擬戦闘を行っているのを凝視した経験は、今でも鮮やかな記憶となって残っています。
 そんな私の「空飛ぶ円盤」熱が急速に冷め切ってしまうまで、時間はかかりませんでした。アダムスキーの著書を買って、彼が金星人と出逢い、円盤に乗って宇宙旅行をしたと書いているのを読んだのです。そのあまりのバカバカしさに、一挙に現実に引き戻されました。中学生にすら判断可能な、「非科学的」物語でした。ジョージ・アダムスキーに対する信用が一気に失墜したことは言うまでもありません。それは「空飛ぶ円盤」全体に対する、不信と否定の噴出でもありました。

 理性的なものの考え方をする人がどうかは、その人を信頼するか否かを判断する上で、非常に重要なチェックポイントであると思います。人格分裂者でない限り、一方で荒唐無稽な主張をする人が、他方で傾聴に値する立派な意見を述べるとは期待できません。下の欄は、要点を非常に簡略化してまとめてあり、読了に必要な時間・努力はそんなに大きくないはずです。「空飛ぶ円盤」の実在を“現時点で”主張する人々が信頼に値するかどうかを考えていただくために、以下の拙文を是非お読み戴きたいと思います。


U F O

 はじめに、言葉の定義をはっきりさせておきましょう。「空中に」(つまり、地上・地中・水中は除かれます)観察された現象のうち、
 1. その正体を確定できなかったものを“未確認空中現象 Unidentified Aerial Phenomena; UAP”と呼びます。これが、移動もしくは浮遊する「物体」であると見なす立場に立ったとき、“未確認飛行物体 Unidentified Flying Object; UFO”と言います。
 2. 正体が判っている飛行物体は“確認済飛行物体 Identified Flying Object; IFO”と呼びます。

 1954年に、アメリカ海軍の物理学者トーマス・タウンゼント・ブラウンを創始者として、全米空中現象調査委員会(National Investigations Committee on Aerial Phenomena :NICAP)という組織が設立されました。各国政府や軍関係を除く、民間では初めての未確認空中現象研究団体でした。この団体は極めて科学的な立場を採り、「未確認」の範囲を非常に厳格に狭めて、【反射や空気のレンズ現象によって屈折された サーチライトの光である可能性があるもの,空電現象で説明がつくもの,透明または半透明であるもの,等を除き】「物体」であるとしか考えられないもの【たとえば、月の前面を通過するとき「影」となる等】だけをピックアップして“UFO”としました。

 「空飛ぶ円盤」の超現代技術性を表すものとして「(気象)レーダーに写っているのに、肉眼には見えない」例が多く述べられますが、これらの殆ど全ては月や雲です。初期(コンピュータが発達せず、ドップラー効果等による分別手段がなかった時代)の軍事レーダーは、月や雨・雲・霧 等に感応しないように、状況に応じて感度を調整していました。それに対し、気象レーダーは高感度でなければ役に立ちません。地平線に昇る月さえも、捕らえることがあったのです。したがって、肉眼でも、軍事レーダーでも確認できないのに、(高感度の)気象レーダーのみが捕らえた「飛行物体」は、UFO ではありません。
 【睡眠中の夢・覚醒中の幻覚や、太陽直射でできる影から始まって、鏡・電話・ラジオ・写真・テレビ、等々、非日常的な状況やその時代の先端技術に「幽霊」が出現するのは偶然のことではありません。その時代の知識で説明できない事柄や、先端技術を「理解不能な不思議」としか受け取れない無知蒙昧な人々が、それらを幽霊の絶好の住み処としたからです。「先端技術」であったものが、日常的な「非不思議世界」の存在物になると、それらの技術に幽霊は出現しなくなります。「空飛ぶ円盤」も、そうした「幽霊」のひとつに過ぎません。】

 ブラウンは経理に不適切な行為があって、1957年に同委員会を放逐され、代わってアメリカ海兵隊の退役少佐ドナルド・キーホーが委員会の実権を握りました。不幸なことに、キーホーは「空飛ぶ円盤」や「宇宙人」の実在を信じるような人でした。彼の登場によって、NICAPは非科学的な組織へと変質してしまったのです。この頃から、(元来は非常に厳密で科学的な言葉であった)UFO が「空飛ぶ円盤」とオーバーラップして使われるようになってしまいます。【NICAP は1973年に解散】

 アメリカ空軍【既に公的UFO調査計画「プロジェクト・ブルーブック(Project Blue Book)」が存在し、1948年から1969年まで精力的に調査活動を行っていた】は、1966年10月、調査委員会(コンドン委員会。委員長:コロラド大学物理学教授エドワード・U・コンドン)に学術調査を委託します。1969年、コンドン委員会は、最終報告書“未確認飛行物体の科学的研究”をまとめ、「UFOが地球外生命体の乗り物であるという説には、なんの証拠も認められない」と結論づけました。これが、現在も支持されている「科学的に確立した」結論です。

 言葉の定義からして、UFO は「空飛ぶ円盤」ではあり得ません。なぜならば、“UFO”とは正体不明なものを指すのであって、「空飛ぶ円盤」であると確認された瞬間に、それは“IFO”に移行してしまいます。UFO は、宿命的に UFO 以外の何者でもあり得ないグループ名なのです。

Flying Saucers

 未確認飛行物体(あるいは、未確認飛行物体であると主張される目撃談)の中には、形のはっきりしたものがありました。それを強く主張された初期のものが、「皿のような形」をしていたと報告されたので、それを“Flying Saucer”(日本語訳:空飛ぶ円盤)と呼び習わしました。「皿形」ばかりではなく、「葉巻型」「三角形」「円柱型」その他のものが報告されていますが、すべてひっくるめて Flying Saucers と称します【つまり、「円盤」には広義と狭義が存在する】。この段階にとどまる限り、Flying Saucers は UFO の一部です。

 輪郭がはっきりしたものは、どうしても「飛行機」との類推が起こってくることを避けられません。当然のように「秘密兵器説」がとなえられました。(実際に、円盤形の飛行機を試作した国は複数あり、中には空中に浮遊したものもあったのですが、実用性はなく、廃棄されてしまいました。)

 目撃されたのは「秘密兵器」ではありませんでした。代わって、「宇宙人の乗り物」ではないかという、突飛な説が現れました。悪乗りして、「宇宙人と出会った」と主張する人まで現れる始末。【その代表が、ジョージ・アダムスキーで、彼が「撮影」した「空飛ぶ円盤」は“アダムスキー型”と呼ばれ、以後、「空飛ぶ円盤」の典型と見なされることになります。】

 「UFO」(であると目撃者が主張したもの)のうちの多くは UFO ではなく、実は IFO でした。検証の結果、気球だったり、自動車のヘッドライトだったり、飛行機の航行灯だったり、球電現象だったりしたのです。

 悪質な悪戯も少なくありません。そもそもアダムスキーの「円盤」が、トリック撮影であったことも判明しています。確認された(すなわち IFO である)「空飛ぶ円盤」は、ひとつもありません。UFO のはしりである“foo fighter”という言葉が使われ出したのは、第二次世界大戦中のことです。以来60数年。人工衛星が地球を取り巻き、太陽系の果てまで探査ロケットが放たれる時代となって尚、「空飛ぶ円盤」が確認されない以上、それは「実在しない」ものと結論して差し支えないでしょう。すなわち、「宇宙人の乗り物」としての「空飛ぶ円盤」なるものの実在を主張する人は、極めて胡乱な人物であり、「UFO」と「空飛ぶ円盤」を区別できないような人は、論理性ゼロの人であると断じて差し支えないと考えられます。

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