Le Petit Prince

ペーパーバック版

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 レイナルヒチコック社版にペーパーバック本が存在します。幻といって良いほど珍しいものでした。アメリカのある古書店が「昔、レイナルヒチコック社のペーパーバック判を扱ったことがある」と自慢したほどの希少品です。インタネット上に所蔵ペーパーバック本を公開したのは、私が世界で初めてだったと思います。
 その時点では、私が所蔵する“Second Printing”のみでしたから、ペーパーバック本は第2刷のみと思っておりました。その後少しずつ公表する人が現れ、現在(私以外に)3冊がネット上で確認できます。【他に、一度現れたものの、ネットから消えてしまったものが1冊。それら4冊はすべて第1刷のペーパーバック判です。】

 Jaume Arbonés 氏:コレクション
【Advanced Reading Copy「発行部数500」という推定値は、「本屋さんから聞いたのだ」とのこと(ARC 500部というのは、通常の「常識的」値です)。私は、そんなに多く市中に出たとは思いません。500部といえば英語版初版の限定署名本と同程度の数ですが、それとは比べものにならないほど珍しいのですから。】
 関東学院大学図書館:関東学院大学図書館報 (PDF 書類。表紙画像のみ)
No.25, 2006.10
 
  eBay のネットオークションに、1st printing が現れました。
出品者が設定した最低価格に達せず、2度にわたるオークション(2010年3月13日/同5月3日、終了。その際、私のウェブサイト(英語版)を引用して、2006年に紀伊国屋で開かれた西洋稀覯書展での価格を紹介しています)の末に、希望価格を公表しての即売(2010年6月4日まで)になりました。価格は $2,100.- です。
ペーパーバック版は市販品

Brentano's 社 予約募集リーフレット
 R&H 社が刊行した初版本には英語版とフランス語版の布装表紙判(ハード・カバー, HC)、およびフランス語版の紙表紙判(ペーパー・バック, PB) の 3 種類があり、 HC には、著者の署名とシリアルナンバーを付したものがそれぞれ 500 部と 250 部市販された。 PB は、その存在すら一般には知られず、素性は現在でもはっきりしない。
  1853 年に創立された Brentano's はニューヨーク市 5 番街 586 番地に本部を持ち、フランスがヴィシー政権下にあった時期には、出版部を有して亡命者の著作等を出版した。パリ・オペラ通りにも支店を(114 年間も!)維持するほどの大手書店であったが、1985 年に身売りし、1994 年には Borders Group に吸収された。2009 年 6 月 12 日にパリ支店も閉店(その後別人が買い取り、書店・お土産屋として再出発)した。
 その Brentano's が、The Little Prince/Le Petit Prince 初版の購入予約を募っていた事を示す未知の新資料を入手した。図は、二つ折り 4 ページのリーフレット最終ページ(はがき判前払い予約申し込み書)と第1ページ、および、第2・第3ページである。

 最終ページに依れば、初版本 5 種類の内容は前述の通り。HC 販売価格は、通常判が 2 ドル・署名判は 3.5 ドル。問題の PB は5行目、1.5ドルで、署名判はないことがわかる。PB は廉価市販品として発行が予定されていたのであり、実際に、少なくとも 1943 年6月には配本済みであった(本ページ最終項参照)。
  HC が2 ドルなのに PB が1.5ドルでは、PB の予約は芳しくなかったろう。 R&H は、予約の集まり具合を見て PB の市販を取りやめたのではないかと思われる。とはいえ、前払い予約済者には現品を渡す必要がある。採算が取れないから、専用の表紙を新たに印刷するのはやめて、 HC 用のジャケットを流用したのではなかろうか。そう考えれば、残存数が極めて少ない( = 総発行部数が少なかった) こと、 PB の表紙が市販に耐えられないほど酷い実態(背の厚みが異なるため文字が収まりきれず、表紙・裏表紙の一部に溢れる等。戦時なので、多少の造作の悪さは許されたのかも)であることなどを理解できるが、なぜ第2刷が存在するのかを説明できず、市販を諦めた後、少量の社内用 PB を作成した可能性も棄てきれない。新資料出現にも拘わらず、謎は依然として謎のままなのである。

 正体が謎であったペーパーバック版が、実は市販品であったことが判明したわけです。
 世界屈指のコレクターである Jaume Arbonés 氏が、彼のウェブサイトの中で、彼のコレクションには「$1.50 と手書きの価格記入がある」と述べていました。【私の蒐集品2冊のうち、第1刷の FEP 右肩に “/50” または “150”という鉛筆書きの記入があり、第2刷の方には、FEP 右肩に鉛筆書きを消し去った跡(判読不能)があります。このような記入は、古本屋さんがよく行うことで、オリジナルな品に関する情報としては、第一級のものとは言えません 】

 ニューヨーク州のある古本屋さんが売りに出した本に付随する、元の所有者の切り抜きスクラップ類に、事前広告パンフレットがあり、このペーパーバック版のことと思われる品に $1.50.- の価格が載っているそうです。(極めて高価な価格設定で、折り合いが付かないため購入を諦めましたが、このペーパーバック版の正体に関しては第一級資料です。⇒ 結局購入しました。)

 市販品であるとしたら、なぜこんなに現存量が少ないのか、解けない謎は残りますが、「市販品」であったことは確実になりました。価格設定からして、mass market と呼ばれる、大衆向けの廉価版であることは疑いを入れません。どうしても扱いがぞんざいになりますから、程度のよいものが残る確率が低くなるのは避けられないので、古書市場に残る数が少なくなったのではないかと思われます。それにしても、フランス語版しか見あたらないのは、どうしたわけでしょう。廉価版として売り出したのであれば、英語版もあるはずだと思うのですが . . . 。

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  表紙。左:第一刷。右:第二刷。

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  コピーライトページ。左:第一刷。右:第二刷。

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  左:第一刷。右:第二刷。p.63。「カラス」が飛んでいる。

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  丁の真ん中(糸綴じ面)にカラー画が貼り込みされているのがよく判る。

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 第1刷を入手することができました。かなりの量のアンダーラインや書き込みがあり、それなりの情報を秘めた品であるのはありがたいのですが、傷みも酷いので、先に記載してあった第2刷の説明を先行させて概観を理解して戴き、その後で第1刷を例示して、現時点で考えられる若干の考察を述べようと思います。


第2刷ペーパーバック版

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  表紙。幅が合わないため、背文字が両側に溢れている。


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背の下部には Reynal & Hitchcock の社名が。


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タイトルページ裏には、第2刷の表示。

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タイトルページ。

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物語りの始まり。すべてハードカバー版と同じです。

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第1刷ペーパーバック版

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  表紙

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  裏表紙。背文字が裏表紙面に溢れている。


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刷番号はない。


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いまや世界的に通用する「カラス」が飛んでいる。
フランス語版・刷番号なし・カラスあり ⇒ 初刷  


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貼り込みページ p61-62 を抜き取って糸綴じ部を提示。
ハードカバー版と異なり糊付けが雑で幅がかなり広い。


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鉛筆書きの下線と註釈。註釈は全て英語。


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赤下線と鉛筆書きの註釈


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いったん引いた赤い下線を浪線で取り消している。鉛筆書き下線
の上から赤ボールペンで引き直した部分(一番下の行)も。  


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下線を引いていない行の註釈(英語訳)もある。

 下線は定規を使わず、書き込みは英語。編集上の註記は皆無で、書き込み自体も単なる英語訳にすぎず、英語を母国語とする一般読者による書き込みであることは明白です。少なくとも、校正・註記ではありません。下線や書き込みがどの時期に行われたかは不明ですが、校正刷り・ARC(Advanced Reading Copy) のいずれであるにせよ、市中で一般読者の手に渡るルートに流れたものと思われます。

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 2011年10月になって、ペーパーバック版第1刷の、あまり高額ではない商品を見つけて購入しました。フリーエンドペーパー(FEP)に年月日(1943年6月7日)付きの書き込みがあります。すなわち、6月7日には配本が済んでいたことを表しています。

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 “Le Cercle Gaulois【Le Cercle Royal Gaulois Artistique et Lirréraire. Brussels】への祝意”とあり、署名者の名前が続きます。“La présidente”と言うのですから、女性である事は明らかです。会長・他が女性であったことはないようなので、これはその夫人であると思われます。それに続く名前の綴りと実在人物の照合ができません。【1941年にパーティーを主催した Cercle Gaulois メンバー Mrs. J. A. McCurdy なる人物の存在が確認できますが、名が判りませんし、残念ながら姓の B. McCurdy とも一致しません】

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