ペーパーバック版は市販品
Brentano's 社 予約募集リーフレット
R&H 社が刊行した初版本には英語版とフランス語版の布装表紙判(ハード・カバー, HC)、およびフランス語版の紙表紙判(ペーパー・バック, PB) の 3 種類があり、 HC には、著者の署名とシリアルナンバーを付したものがそれぞれ 500 部と 250 部市販された。 PB は、その存在すら一般には知られず、素性は現在でもはっきりしない。
1853 年に創立された Brentano's はニューヨーク市 5 番街 586 番地に本部を持ち、フランスがヴィシー政権下にあった時期には、出版部を有して亡命者の著作等を出版した。パリ・オペラ通りにも支店を(114 年間も!)維持するほどの大手書店であったが、1985 年に身売りし、1994 年には Borders Group に吸収された。2009 年 6 月 12 日にパリ支店も閉店(その後別人が買い取り、書店・お土産屋として再出発)した。
その Brentano's が、The Little Prince/Le Petit Prince 初版の購入予約を募っていた事を示す未知の新資料を入手した。図は、二つ折り 4 ページのリーフレット最終ページ(はがき判前払い予約申し込み書)と第1ページ、および、第2・第3ページである。


最終ページに依れば、初版本 5 種類の内容は前述の通り。HC 販売価格は、通常判が 2 ドル・署名判は 3.5 ドル。問題の PB は5行目、1.5ドルで、署名判はないことがわかる。PB は廉価市販品として発行が予定されていたのであり、実際に、少なくとも 1943 年6月には配本済みであった(本ページ最終項参照)。
HC が2 ドルなのに PB が1.5ドルでは、PB の予約は芳しくなかったろう。 R&H は、予約の集まり具合を見て PB の市販を取りやめたのではないかと思われる。とはいえ、前払い予約済者には現品を渡す必要がある。採算が取れないから、専用の表紙を新たに印刷するのはやめて、 HC 用のジャケットを流用したのではなかろうか。そう考えれば、残存数が極めて少ない( = 総発行部数が少なかった) こと、 PB の表紙が市販に耐えられないほど酷い実態(背の厚みが異なるため文字が収まりきれず、表紙・裏表紙の一部に溢れる等。戦時なので、多少の造作の悪さは許されたのかも)であることなどを理解できるが、なぜ第2刷が存在するのかを説明できず、市販を諦めた後、少量の社内用 PB を作成した可能性も棄てきれない。新資料出現にも拘わらず、謎は依然として謎のままなのである。
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正体が謎であったペーパーバック版が、実は市販品であったことが判明したわけです。
世界屈指のコレクターである Jaume Arbonés 氏が、彼のウェブサイトの中で、彼のコレクションには「$1.50 と手書きの価格記入がある」と述べていました。【私の蒐集品2冊のうち、第1刷の FEP 右肩に “/50” または “150”という鉛筆書きの記入があり、第2刷の方には、FEP 右肩に鉛筆書きを消し去った跡(判読不能)があります。このような記入は、古本屋さんがよく行うことで、オリジナルな品に関する情報としては、第一級のものとは言えません 】
ニューヨーク州のある古本屋さんが売りに出した本に付随する、元の所有者の切り抜きスクラップ類に、事前広告パンフレットがあり、このペーパーバック版のことと思われる品に $1.50.- の価格が載っているそうです。(極めて高価な価格設定で、折り合いが付かないため購入を諦めましたが、このペーパーバック版の正体に関しては第一級資料です。 & |