時代の流れ・栄枯の風

哀愁の街 ブエノスアイレス

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 Buenos Aires 略して B.A.。更に転じて Big Apple と呼ばれたりもします。南半球最大の近代都市。サンテックスがこの都市に住んでいた頃は、まさに隆盛を極めた時代で、「南米のパリ」と呼ばれた絶頂期でした。商用文書がヨーロッパとの間を大量に行き来していましたから、郵便機の路線を開拓する価値は充分すぎるほどあったのです。時代の波に乗って、サンテックスもまた人生の絶頂期にありました。
 今や国の経済が衰退したうえに世界不況の波を浴び、でっかいリンゴは生気がありません。世界的に有名なデパート「ハロッズ」が撤退した建物は、目抜き通りの一等地だというのに、硝子窓は到るところが破れて真っ暗なままです。毛布にくるまって路傍に横たわるホームレスの姿も目立ちます。*
 早く往年の元気を取り戻してくれることを願いつつ、リンゴの横顔を紹介します。まずは、ざっと観光案内をして街の概観をつかんでいただきましょう。

*  2002年に入って、心配していたことが現実のものとなってしまいました。暴動まで起きる混乱状態。早く立ち直って欲しいと祈るばかりです。

新式フィルムとスキャナの相性が悪く、安物の絵はがきのような色になってしまいました。いずれ読み込み直すこととして、差し当たっては狂った色調で御辛抱願います。

ブエノスアイレス地区割り
 ブエノスアイレス市の各地区の名前と位置。右下が北の方角であることに注意。南半球ではこのように北を下にする方位取りをよく見掛けます。このページでご案内するのは、ラプラタ河に面して色の付いた地区のうち、下辺にある La Boca から Retilo までのダウンタウンと Recoleta・Chacarita の墓地だけです。

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レティーロ地区

 ブエノスアイレスを特徴づける一番のものといえば、何と言ってもオベリスコなのですが、そこを起点に案内したのでは四方八方に引き回すことになり、方向感覚が狂ってしまいます。まずはダウンタウンのはずれ、「レティーロ地区」から始めることにしましょう。北と東をラプラタ河に接するブエノスアイレスの、北東角に当ります。
 港に近く、バスターミナルや国鉄の終着駅がある郊外への交通の要衝です。


レティーロ駅正面
 両側に建物を配した左右対称のデザイン。画面左、尖塔つきのドームがある建物が駅舎の正面部で、コンコースへの出入口になります。

レティーロ駅構内
 コンコースやプラットフォームの作りはヨーロッパ流。日本では見られない高い天井は、蒸気機関車時代の名残りです。幾本ものプラットフォームを持つ大きな駅舎は往時の隆盛を偲ばせますが、現在アルゼンチン国鉄は線路の保守すらままならず、多くの路線が休業・放置されて全国ネットは飛行機とバスに任されています。稼働しているのは主要都市間を結ぶ路線だけ。後ほど案内する Tigre への直行列車はここが始発。
 改札は自動化されています。地下鉄・バス・飛行機・その他の買い物はほとんどのところで米ドルが通用しますが、国鉄だけはペソでないと切符を売ってくれません。


古い建物
 ビルの持ち主の交代にともなう改装や立て直し、そして、場所によっては再開発計画のため、立て替えが進んでおり、サンテックスが住んでいた頃の面影を残す古い建物は、一部の地域を除いて姿を消しつつあります。
 レティーロ駅の南側、大きな広場を挟んだ対面は、港に接してホテルや協同事務所ビルのま新しい高層建築群が聳えます。この写真の建物は、広い道路を隔てて西側に、その高層ビル群と向かい合って残る赤煉瓦造りの建物。サンテックスがいた頃には、このような建物が街の主要部を埋めていた筈です。


アサード専門店の客寄せウインドウ
 頭を落とし、皮と内臓を取り除いた子ウシの開きを串刺しにして遠火で炙っているところ。入り口横の一角が、客寄せのショウウインドになっています。ハイランクのアサードレストランはこのようなショウウインドを設け、まるで約束事のように、入り口扉の内または外に等身大の牛の剥製を置いています。

 アルゼンチン風のステーキを「アサード」と言います。広大なパンパに放牧された牛やヒツジの群れを追って暮らすガウチョ(カウボーイ)達が始めた、粗野で豪快な焼肉料理。牛の「ヒラキ」をまるごと炙ります。本来は岩塩を振りかけるのが唯一の味付けで、各自が自分のナイフで好きな部分を好きなだけ切り取って食べる風習だったとか。
 それを思えば、レストランで出されるアサードは随分洗練された盛りつけになっていますが、分量は凄まじく、並の日本人にはとても食べ切れません(「ニューヨークカット」の2倍はあります)。私は一番小さな「半分」皿に挑戦しましたが、質と量の両面でとても歯が立ちませんでした。驚いたことに「皮付きステーキ」が平然と運ばれてきたのです。
 一口試してみました。火がとおってはいるのですが、皮はとても噛みきれません。皮を敬遠して他の部分に再挑戦したものの、腱を除去しない丸肉を筋肉線維の走行に無頓着にカットしてあるものですから、噛み滓が口の中に一杯残る野趣満々たる料理で、赤ワインの助けを借りても半分と食べられずに降参しました。

その時飲んだ赤ワインのラベル

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7月9日通りとオベリスコ

7月9日通り
 7月9日はアルゼンチンの独立記念日です。その名を冠するに値する国内随一の広い道路。ブエノスアイレスの中心部を南北に貫きます。ブエノスアイレスの中心部は、1辺 100m のブロック(Cuadra)で構成されています。つまり、100m おきに道路があるということです。500m 毎に広い道路が配されます。地図で見ると7月9日通りは1ブロックの幅がありますから、100m 道路というわけです*。長さは 26 ブロック、2.6km です。

* 実は3本の道路からできています。この写真に見られるように、片側8車線の南北行き道路(写真左は中央分離帯。右側が南行きの片側とグリーンベルト)が中央に走り、その両側に並木を備えたグリーンベルトを介して、南行きの Cerrito 通りと北行きの C.Pllrgrini 通りが伴走します。両側の伴走道路を除いて、ふたつの緑地の端から端までが 100m 幅です。



コロン劇場
 レティーロ地区方面から7月9日通りを南下して、オベリスコまで3ブロックのところまで来ると右側に、ミラノのスカラ座に次ぐ大きさのコロン劇場が威容を誇ります。(パリのオペラ座と併せて三大劇場。)
 隣接する小さな緑地と併せて1ブロックを占拠しています。

コロン劇場/7月9日通り側
 7月9日通りに面した出入口は、実は裏側。

コロン劇場/正面
 正面入り口は、リベルタード通りを挟んで Gral.Lavalle 広場に面している。通りから通りまで、約 100m の長さを持った建物というわけです。


 7月9日通り両側の緑地帯には並木が植わり、木陰にはベンチもしつらえてあります。コロン劇場を正面に見る Cerrito 通りの緑地で若い二人連れを見かけました。

恋人たち
 アルゼンチンは未婚女性の天国です。歓心を買おうと男達は、奴隷さながらにつくします。それでもあっさりと乗り換えられてしまうことが珍しくありません。でも、この二人は様子が違いました。男性側から別れ話を持ちかけられでもしたのでしょうか。女性が足下にかがみ込み、何かを必死に訴えかけながら男性を掻き口説いているのです。やっと仲直りができたのでしょうか、二人が手をつないでこの場を立ち去るまで、およそ30分もの間この状態が続きました。「惚れたが負け」は世界共通のようです。


 世界一広い道路、7月9日通り。それと直交する大通り群の代表格の一つ、コリエンテス通りと交わる交叉点の中央にオベリスコは建っています。

 界隈は中級レストランからファストフード店、その他諸々の店が並ぶ繁華街。  地下鉄3線が交差する場所でもあり、小規模ながら地下街もあります。狭い地下通路には、大坂梅田地下のそれを思わせる屋台ふうの安い飲食店と、キッチュな「骨董品」や絵画を売る店が並びます。

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コリエンテス通り

 「♪ Corrientes 348 .....♪」タンゴファンなら知っているはず。歌に唄われたコリエンテス通りは、ブエノスアイレスを東西に貫く幹線道路(東向きの一方通行)でした。

これがあの!
 オベリスコを背にしてコリエンテス通りを東へ。岸壁の赤煉瓦作りの倉庫群を再開発したおしゃれなレストラン・ショッピング街が眼下に現れる頃、東京三菱銀行ビルがあるブロックの東隣りにそのビルはありました。 この辺り、コリエンテス通りは、河岸に向かって坂道を下ります。
 コリエンテス通りが、車の騒音に満ちた大通りであったことも予想外でしたが、348 番地を訪ねあててもっと驚きました。大きなビル!

348番地
 たしかにアパートではあるのですが、道路に面した一階は、大きなショウウインドを持つ商店群。ひっそりとした佇まいとは無縁の堂々たるビルです。唄で想像していた、高級娼婦が客を誘って密やかに階段を登るイメージは、どこかに消し飛んでしまいました。
 ビルの地下が駐車場になっており、348番地はその出入口になっていました。いつもはポッカリと口を開いています。

   

348番地の扉
 日曜日は駐車場はお休み。扉は閉ざされて、名曲「淡き光に」を記念する歌詞と楽譜が顔を見せます。いつもは通りを埋め尽くす車の数ももめっきりと減り、森閑とした街並になります。

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