草 稿
「星の王子さま」論考
/Le Petit Prince 考究


 これは標題にあるとおり“草稿”です。少しづつ書き足して行きます。訂正したり、削除したり、 アイデアやメモを書き込んだり。原稿が作られ・推敲されて行く過程をネットの上で公開してしまおうというのです。おそらくインターネット始まって以来初めての試みでしょう。
 素人の手すさびですから、内容は大したものではありません。時間があるときに書き足すのですから、 完成まで何年掛かるか見当がつきません。惨めな失敗に終わってしまう可能性も大きいのです。でも、 挑戦してみる価値はあろうと思います。
 ご返事できないかも知れませんが、いろいろなご意見をお寄せ戴ければ、執筆の参考にさせていただきます。


 この草稿も、リンクフリーです。ご自由にリンクしてくださって構いません。ただし、著作権法に定める権利を放棄している訳ではありません。テキストや画像をダウンロードしてお使いになる場合は、引用元を明記してくださるようお願い致します。
 恣意的な改変や、部分部分をつまみ食い的につなぎ合わせて趣旨の誤解を起こすような要約はご遠慮下さい。


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第 一 の 章
「星の王子さま」論考

この章では、内藤 濯さん訳の「星の王子さま」特有の問題を中心に、その他の新訳も含めて日本語訳の問題点を扱います。

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各論

第17章
 
 17-1 ヘビが触れる?
 著作権保護期間の(一時的な)終了によって、2005年は Le Petit Prince 新訳ラッシュが起こった。新訳ばかりではなく、解説書もブームとなった。その2005年も終わろうとしている。現在までに出版された翻訳書および解説書すべてが、沙漠で出会った毒蛇の言葉として、「『触った相手』はすべて土に返してやる」と訳している。原文は“Celui que je touche, . . . ”である。“toucher”に「咬む」という意味がないから「触る」にしたのであろう。
 毒蛇が「触る」では全く意味が通らないし、王子に巻き付いて(=触って)いるのに、王子は死なない。訳文を読み返して、変だと思わないのだろうか。
 琉球諸島では「ハブに撃たれた」という。毒蛇の生態を的確に表す言葉である。ヘビの話で述べたように、毒蛇は毒牙を相手に「突き刺して」、一瞬後には身を退いて相手を窺う。「噛み付き」はしない。
 フェンシングの試合で“touche”は「突き」である。また、日本の剣道では、「斬るのではない。撃つのだ」と教える。これも“touche”に近い。この場面、強力な毒を有するヘビが、鎧袖一触「ただの一咬み」で相手を倒すと王子に自慢しているのだ。王子が「指のように細い」と嘲ったことへの返答である。ひとたび触れる(「指す」・「刺す」)やあの世への旅立ちを執行する死神の指。「突く」と「触れる」の両義を持つ“toucher”が選ばれていることに気づいた上で、ヘビの行動にふさわしい言葉選びがなされなければならない。

 聖書にヨブ記という項目がある。ヨブは信心深く敬虔な人であった。だが、彼はエホバに愛されその庇護の下にいろいろな利益を得ているからエホバに忠実なのだとサタンは主張する。「 . . . 彼が持っているすべてのものに触れ、果たして彼があなたを呪わないかどうか . . . 」とエホバに挑戦する(ヨブ記1章11節)。この「触れる」は、家畜を死なせ、家財を失わせることを意味する。【ただし、2章5節にも同様の件があり、この場合は殺さない。罪もないヨブは散々な目に遭う。エホバの了解の許にこれを実行したのはサタンである。また、イヴを唆して禁断の木の実を食べるようしむけた場面でも明らかなように、ヘビはサタンの化身である。】 星に還すためプリンスに「触れる」ヘビは、神なのかそれとも悪魔なのか?

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第二の章へ続く

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