60年に一度の配列

木星・土星・アルデバランの大三角

hair line

 「星の王子さま」の表紙に描かれた星座が判明した、と朝日新聞(東京版:2000年12月2日夕刊,福島県版:2000年12月3日朝刊)の紙面を飾る記事が掲載されました。東京版の方が四段トップ(第14面)と扱いは大きかったのですが、福島版もトップではないものの、中段に五段抜きの囲み記事(第14面)というなかなかの扱いでした。両者共に、表紙のカラー画像と問題部分の星座写真を含み、素人にも判りやすい解説です。

logo
 東京版の記事。見出しは、上段に「"星の王子さま"と同じ星空」,下段に「福島の研究者発見/60年に一度の三角形/来年4月まで」とあります。右側の緑色の文鎮(長さ 14.5 cm。王子さま時計の箱は、長さ 15.7 cm,幅 7.4 cm)の下方にある写真は、右半分が岩波愛蔵版「星の王子さま」19ページの挿絵で、表紙や函に使われているものと同じ図柄です。左半分は同年11月初めの夜空の星の望遠写真で、木星と土星、それに、牡牛座α星のアルデバランが大きな三角形を形作っているところを示しています。この三角形が、「星の王子さま」挿絵の星の配置とそっくりであること,この配置が1940年にも起きており、サンテックスはその星空を眺めたことがあるはずだということ、挿絵はその星空を思い出して描かれたのではないかという説が発表されたという記事内容です。
 とても残念ですが、内容が判読できるような大きさと鮮明度で画像を掲載することも、記事内容をそのままテキストとして引用することもできません。著作権に関わるからです。日本中の新聞社は、著作権に関しては協定を結び、一律に極めて厳しい線引きを行っています。社説や記事では先進的な意見を吐きますが、新聞の実体はとても保守的で、自己利益の確保に汲々としていると言って過言ではありません。

logo
  こちらは福島県版。5段の囲み記事ながら、文字数は東京版の半分位。見出しは、星の王子さまと同じ星空/福島の研究者が発見/60年に一度の「三角形」。写真は同じ。
 地方版は夕刊なしの「総合版」として売られることが多く、紙面の関係で記事は圧縮・取捨選択されるので、大都会版とは内容が異なったり、掲載されなかったりします。この記事、地方版用の縮小記事というよりは、(他の地方版には掲載されなかったものが)地元ゆえに特別扱いで掲載された囲み記事なのであろうと思われます。

hair line

 記事の主人公は、椚山(くぬぎやま)義次さんとおっしゃいます。宮沢賢治・内村鑑三の研究者で、現在は喫茶店を経営なさっているそうです。天文ファンでもあり、夜ごと星空を観察するうち、この60年に一度の三角形が、「星の王子さま」表紙の天体配置にそっくりであることに気づかれたのです。
 椚山さんはその事を、11月11日福島大学で開催された日本比較文学会 東北・北海道大会で、“サン=テグジュペリ「星の王子さま」の謎を解く”と題して発表なさいました。準備中の論文では、星の番号や章の数について、聖書学の観点から新説を展開なさるとのこと。「星の王子さま」ファンとしては一日も早い刊行が待たれます。

 上記の事柄に関しては、このHPの読者の方からお知らせを戴き、詳しい資料も送っていただきました。ありがとうございました。
 この記事のことを私は全く知りませんでした。私が住んでいる地域では、この記事は掲載されなかったのです。同様に、図書館へ行って古新聞をひっくり返してもそれらしい記事を探し当てられなかった人は多いことでしょう。内容や写真をもっと詳しくお伝えできると良いのですが、それが叶わないのがとても残念です。

 実は私は、上記の椚山説に賛成しておりません。
 サンテックスは夜間飛行もこなす郵便機操縦士でしたから、星に関する知識は正確で、位置を移動する惑星と天測の拠り所となる恒星とを同列に扱うことは考えられません。Le Petit Prince の挿絵中に現れる2種類の「星」は、意味あって描き分けていたはずです。
 放射状の光線が付け加えられている丸い「星」は、太陽でしょう。土星は輪が描かれているので異論がありません。それ以外の、丸く描かれている「星」と、5角や6角の芒角を持つ「星」とは、区別すべきものだと思っています。すなわち、丸い星は惑星と小惑星、つまり、太陽系内の星です。芒星は恒星を表していると私は考えています。その考えに従えば、アルデバランは芒星でなくてはならず、上記の三角形には含まれないのです。表紙の「星」の配置が、サンテックスが実見した夜空を模しているというのは、うがちすぎた説だと私は考えています。

 椚山さんが木星・土星・アルデバラン説を発表なさったのは2000年12月のこと、それから6年半が過ぎました。サンテックス生誕100年ということもあり、話題としては結構なことだったのです。別項で述べるように、星座の確定は不可能で、異論や反論を述べる人はいなかったので、ただひとつの説として今日に至っております。そのため、まるでこれが定説のように引用されるというのは、困ったことです。
 上欄に述べたように、当初から私はこの説に賛成しておりません。他にも首を傾げる人はいらっしゃいます。ネガティヴな結論なのですが、「その他の説」を公表しておく必要があろうかと思い、卑見を述べるページを増補・更新しました。

hair line

 天体写真を掲載しているサイトを見つけました。野外教育研究所の特集ページ星の王子さま 60年に一度の天体ショーが見ごろです。(2000年秋〜冬)をどうぞ。

 半年間の惑星運行アニメーション付き:「星の王子さま」木星・土星・アルデバランの接近三角形。 1940年ではなく、1941年7月の配置がこの大三角形に近いのだそうです。
 トップページはプリオシン海岸。 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を柱に、宇宙論・文明論・SF映画選集 ...... 。豊富なコンテンツを擁するお勧めの力作 HP。天体ファン必見サイト。


トップページに戻る
総目次に戻る