サンテックス城

所有権の現状

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サンモーリス城(サンテックス城)(2005.10.6 撮影)

 サンテックスが少年時代の夏を過ごしたサンモーリス城(とその周辺の農地)は、母の親戚であるトリコー伯爵夫人の持ち物でした。トリコー夫人が亡くなると、遺言によって母マリーの財産となりました。(1920年4月)
 うまく経営すれば親子が生活するのに困らない財産でしたが、ついに維持できなくなります。館と家具は売りに出され、田畑はそれぞれの小作人に安く払い下げられました(1932年7月)。破産の最大の原因は、サンテックスであったと思われます。経済観念が破滅的に欠如しており、母親に常識はずれの無心をするばかり。ブエノスアイレスに支配人として赴任し、使い切れないくらいの収入を得たときにも、くだらない散財を繰り返して、母親への仕送りをした形跡はないのです。

 館を買い取ったのはリヨン市でした。リヨン市は林間学校として活用し、それを担当したのが Croix des écoles de la ville de Lyon でした。時代が移り、林間学校の内容・必要性も変わりました。財政上の理由もあって、リヨン市はサンモーリス城を手放すことにしました。1997年、青少年育成事業に実績がある団体 ALFA 3A(アルファ・トロワザー,Association pour le Logement, la Formation, l'Animation - Accueilier, Associer, Accompagner)に払い下げられたのです。
 ALFA 3A 以外にも、払い下げを希望した団体がありました。サン・モーリス・ド・レマンス村とダゲー家です。サンモーリス村には、館や敷地を買い取る財源はありません。村が所属するエン県が財政支出をしてくれることを期待しましたが、無理でした。ダゲー家はサンテックスの遺産相続者(の片方)であることをたてに、ただ同然の価格で譲り受けることを期待しました。リヨン市には、それに応えるべき理由も経済的余地もありません。ALFA 3A は、青少年育成用の季節学校として使用を開始しました。
 ダゲー家は諦めませんでした。村人に働きかけて、譲渡無効の訴えを起こしました。実は、リヨン市に手続き上のミスがあったのです。リヨン市の所有物でしたから、これを民間に払い下げるためには、「公共施設登記抹消」の事務手続きが必要でした。それをしないまま売却してしまったのです。エン県が仲介役となり、話し合いが行われました。2002年になって和解が成立し、サンモーリス城は ALFA 3A が所有し続けることで正式に決着しました。ところが最近になって、和解に加わった村長が村長選挙で落選し、新しく女性村長が選出されました。新村長はエン県が財政支援して、サンモーリス城を村の施設として活用するよう希望し、和解破棄を宣言しました。前村長が正式に承認・決定したことを、後任村長が破棄できるものかどうか問題がありますが、とにかく話がこじれてしまいました。
 現在の所有者はもちろん ALFA 3A です。ダゲー家は村を抱き込む形で、お得意の訴訟に踏み切る模様です。「公共施設登記抹消」が出来ていなければ払い下げを受けられないのはダゲー家も同じですから、「訴えの利益」が無く、単独では門前払いを喰わされてしまいます。村長選も含め、村人への働きかけは欠かせません。一方エン県は裕福な経済的基盤を待っているわけではありません。サン・モーリス村支援の予算案を計上しましたが、そのため大幅な赤字予算になったと地方紙に報道される始末。展示内容等、独力でミュージアムを構築する力量は、元々ありはしないのです。ふたつは、互いにタグマッチを組む必要に迫られています。ALFA 3A にも経済的な困難があります。加えて、ダゲー家が著作権や商標権を楯に図版の展示を拒んだり、現在サン・モーリスやリヨンに置いてある模型その他を撤収したりすれば、ミュージアム構想は頓挫しかねません。今後どうなるのか、裁判所の判断次第の状態です。


 ALFA 3A は、さまざまな活動を行っていますが、基本となるのは少年に対する教育と生活の援助です。対象となるのは4歳から18歳までの少年少女で、麻薬・犯罪・経済的困窮・その他の理由で家庭に問題があり、親元に置いておくことが望ましくない状態にある場合、引き取って教育や生活指導を行います。引き取られる当人自身が麻薬歴や犯罪歴を持っている場合もあります。各地で活動している団体の連合グループで、拠点となる建物はフランスのあちこちに4箇所持っています。(昨年訪問したときは3つでした。一箇所増えたわけです)。サン・モーリス城(通称であって、正式の名前ではありません。ALFA 3A は、サンテックス城と命名する予定です)は、ローヌ・アルプス県を活動の場とするリヨン・サンテグジュペリセンターの活動拠点で、春から秋まで、不定期に林間学校として使用されています。

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現在 ALFA 3A が使用している教育用施設(2005.10.6 撮影)

 ALFA 3A は、ボランティア活動をするメンバーで成り立っていますから、集められる会費や寄付は限られています。活動の経済基盤は、各県からの教育援助資金が最大のものですが、ミュージアム設立や、そのための建物改修費に流用することは許されません。城を、観光遊園地ではなく、作家・開拓者としてのサンテックスの偉業を理解させ、教育に役立つようなミュージアムにしたいというのがリヨン・サンテグジュペリセンターの希望です。しかし、おそらく日本円にして億を超すであろうサンテックス城の改修費をどのように工面するか、目途が立たないのです。もし、サンテックス城を失うようなことになれば、ALFA 3A は中心的な活動拠点を失うこととなり、とりわけローヌ・アルプス地方の活動に支障を来します。


 日本には、ダゲー家の代弁、もしくは、ダゲー家側から提供された情報を鵜呑みにしていろいろなことを書き散らす人々がいますが、もう一人の遺産相続者であるマルチネス・フルクトオーソ氏やサンモーリス城の所有者であるリヨン・サンテグジュペリセンターの意見や状況を伝える人は皆無です。
 私は、昨年リヨン・サンテグジュペリセンターを訪れた際にミュージアム構想を聞き、ミュージアムが出来るのならば、レイナルヒチコック社の限定署名英・仏初版やガリマール社の1945年初版等を寄付することを申し出て大いに感謝されました。その後の進展を知るためと、「10年来裁判をしている」という情報の真偽を確かめるために、今回のグラース市訪問の途中、リヨンサンテグジュペリセンターを再訪しました。その結果、昨年とは状況が一変したことを知った次第です。

 私自身は、ALFA 3A の所有権が確定し、多くのスポンサーを得て健全なミュージアムが建設されることを望んでいます。落ち着いた佇まいのこの静かな村に、利潤追求型のテーマパークを作って欲しくはありません。

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