サンテックスの遺産

2系統の相続人

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 サンテックスの著作権や遺品に関する権利保持者としては、ダゲー家のダミーである「遺産相続人会」(仮称)が有名で、日本では唯一の権利継承者であるかのように思われています。でもそれは、事実に反します。


 別項で述べたように、サンテックスはその死後に、自分の財産分与に関するメモを残しました。きちんとした遺言書ではありませんから、遺言として扱うべき否か、一揉めあったようです。結局は、そのメモの通りに財産は分けられました。
 サンテックスには子供はなく、コンスエロとは離婚していませんから、遺言がなければその遺産は全額コンスエロが相続することになります。遺言と認められたメモは、財産を二分して母マリーとコンスエロとに分与することを指定していました。著作権は等分して、二人が相続しました。つまり、Le Petit Prince を初めとする印税は、二人が半分ずつ分け合ったのです。
 これとは別に、作品の「管理者」として、愛人兼庇護者であった“B夫人”を指名しており、その通りになりました。ただし、作品管理が遺産として相続されるべきものか否か(つまり、B夫人が亡くなったら、その子供が引き継ぐことになるのか否か)は問題があります。B夫人個人が管理を任されただけであって、「遺産」とは異なる性格のものと考えるのが普通であろうと思われます。


 母マリーの死後、その遺産は二人の子供(サンテックスの次姉シモーヌと妹ガブリエル)が等分したものと思われます(確認できていません)。やがてシモーヌが死去した結果、その遺産はガブリエルに引き継がれたのであろうと考えられます。すなわち、サンテックスの遺産の半分は、ダゲー家のものとなったわけです。ガブリエルが死ぬと、ダゲー家は個人が遺産を相続することを避け、遺産相続人会を立ち上げます。相続に起こりがちな肉親同士の争いを避け、同時に(多分)相続の度ごとに課せられる税を逃れられる、貴族ならではの巧妙な智慧です。(遺産とは別に、 さまざまな商標登録を行っていることは、別項で述べました。)

 日本では殆ど知られていませんが、コンスエロの遺産は、遺言によってマルチネス・フルクトゥオーソ(Martinez Fructuoso)氏が相続しています。岩波書店の「星の王子さま」の印税も、半分をマリーやダゲー家が、残り半分をコンスエロやマルチネス氏が、それぞれ受け取っていたそうです。

怨念の遺産贈与

以下に述べることは、何の根拠もありません。私の勝手な憶測です。戯れ言としてお読み下さい。

 コンスエロには子はありません。エルサルバドルには親戚がいるはずですが、疎遠です。フランスでの晩年の生活は、天涯孤独といって良い暮らしぶりでした。上記のように、コンスエロの遺産を相続した人はマルチネス・フルクトゥオーソ 氏といいます。私は氏をコンスエロの親族だとばかり思っていました。そうではなくて、彼女の運転手を務め、晩年には秘書もしていた人に過ぎないと聞いて唖然としました。サンテックスの作品は世界中で売れまくっていますから、その遺産の年収たるや莫大なものになります。いくら信頼できる秘書だとはいえ、赤の他人に遺産の贈与はやりすぎです。「コンスエロらしい気まぐれ」では済まされません。となれば、マルチネス氏は内縁の夫もしくはボーイフレンドかと疑いましたが、そうではないとのことです。そこで考えられるのが、ダゲー家との確執と怨念です。
 結婚式前からダゲー家とはギクシャクしていました。夫婦仲が旨く行かなくなってからはもう決定的。サンテックスが死んでからは敵対関係でした。サンテックスの母マリーと分け合った遺産は、マリーが逝きシモーヌも亡くなってダゲー家のものになってしまいました。このままコンスエロが死ねば、権利はすべてダゲー家のものになりかねません。「時間の問題」としてダゲー家ではその時が来るのを待ち望んでいることでしょう。ダゲー一族の誰かが、面と向かってコンスエロにそれを言ったかも知れません。犬猿の仲でしたから、成り行き次第ではあり得ない話ではないのです。
 「本来ならば全部私のもの。ダゲー家に半分盗られていることさえ忌々しいのに、ハゲタカみたいに私が死ぬのを待っているなんて。絶対渡してやるもんか!」 コンスエロにとっては、ダゲー家以外なら誰だって良かったのではないでしょうか。偶然身近にいて、いろいろ尽くしてくれるマルチネス氏に白羽の矢を立てたのだろうと、私は考えています。

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