挿絵の商用使用権


商標登録/意匠登録

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  日本における Le Petit Prince の著作権権利保護期間がやっと終了し、翻訳権がパブリックドメインに移りました。挿絵も著者自身が描いたものですから、本文とセットでパブリックドメインに移るのが当然と思われます。ところが、実態はそう簡単ではないのです。

著作権・商標権・意匠権
 著作権、著作物を作成しあるいは発表したときに、 自動的に発生します。登録その他の手続きは必要ありません。著者存命中はもちろんのこと、その死後50年間権利が保護されます。Le Petit Prince の日本における保護期間は、戦時加算を含めて終了しました。 フランス語テキストは自由に使用出来ます 。絵画についての著作権も全く同じで、作者死後50年で保護期間が終了します。フランス語テキストと同様、 挿絵も自由に使用出来ます。内藤 濯さんが翻訳した日本語テキストには、 翻訳著作権が発生します。保護期間は、原著の場合と同じ、死後50年間です。
 意匠権というものもあります。簡単に言えば、創造性のあるデザインに対して与えられる独占権で、登録申請をして受理されなければなりません。工業製品・実用商品を主眼として作られた法律で、実用新案特許が得られなかったときに意匠登録に切り替える例も多く見られます。新規性が必要で、かつ、制作・実現不可能なもの,肉眼で認識出来ないもの等は受理されません。有効期間は15年間で、延長は出来ません。新規性という点から、「星の王子さま」の図柄がこれを獲得するのは難しいと思われます。
 商標権というものは、屋号や商品名等に用いるロゴに対する独占権ことで、文字だけでなく、平面または立体のデザインも含まれます。同じ名前の商品や会社が乱立して混乱や犯罪が起きることを防ぐ目的の規制です。登録が必要で、有効期限は10年間ですが、繰り返し更新登録することが可能です。

 「星の王子さま」という内藤 濯さんの日本語訳には、著作権が生きています。一般に、書名・タイトルには著作権は適用されませんが、書名「星の王子さま」は、1)それ以前には存在しなかった名詞であること,2)原題 Le Petit Prince からは絶対に訳出され得ない表題であって内藤さんの創作であること,3)内藤さんの(または岩波書店版の)特定の書物の標題であることが一般に知られ・認知されていること、等の事実から、特別扱いされるべき事由があると私は考えています。

 ロゴ「Le Petit Prince/星の王子さま」に関しては、しつこく商標登録をしています。
 登録商標で注目すべきは、登録番号2094428の出願です。1986年10月30日に出願し、自動的に先願権が発生しています。この申請は1988年に登録され、1998年に更新登録(権利者名:ジャン ダゲー)されているのですが、少なくとも一旦は「全部無効」と審判されているようなのです。1991年3月28日に審判請求を行っており、審判番号は「平3-6144」です。区分・指定は「織物・その他本類に属する商品」となっています。
 それに先だって1991年3月14日に別の査定不服審判(平3-5387)を請求しており、1997年に登録されています(登録番号2721467,権利者名:ジャン ダゲー。出願は1988年1月19日)。区分・指定は「織物・編物・フェルト・その他の布地」です。
 二つの関連がよくわかりませんが、最終的な審判が「無効」だったのかどうか、調査中です。
 1990年前後に何かが起きたことは確実なようで、それ以降計12件もの出願を、様々な区分に分けて行っています。出願日で分類すれば7つのグループになります。すべてを合わせた区分・指定はあきれるほど多岐なので、内容は省略して、利害もしくは興味を持つ方のために登録番号だけを記載しておきます。
 【登録2224180, 登録2234170, 登録2240851, 登録2282767, 登録2302130, 登録2342620, 登録2387562, 登録2496068, 登録2686979, 登録4629053, 商標出願2004-106890, 商標出願2005-024239。】
  このうち、登録2387562の区分は新聞,雑誌 です。「関連分野」として単行本が含まれるのか否か、不詳です。登録2094428と登録2342620のふたつだけは、「Le Petit Prince」を含まず、「星の王子さま」だけの申請(他はすべて「Le Petit Prince,星の王子さま」)です。区分については、全部をあわせるとほとんどの商品は網羅されてしまいます。

 ダゲイ氏やその財団をキーワードとして検索を続け、少なくともポーランドでは商標として絵を登録していることが判りました。

CFE: 1.5, 2.5

 ご存じ、表紙によく使われる「B-612 の王子」です。これと似た図柄はすべて規制され、ポーランド国内での製造・販売には許可が必要となります。ポーランド語は理解できないので、区分・その他の内容は読みに行っていません。

 日本での画像の商標登録について p_prince さんからご教示戴きました。上記と同じ図柄が、登録4364550として受理されています。「星の王子さま」の名称はなく、「Le Petit Prince」で、区分は25 被服,運動用特殊衣服,仮装用衣服,履物,ベルト,バンド,ズボンつり,靴下止め,ガーター,運動用特殊靴、だそうです。(p_prince さん、ありがとうございました。)

ダゲイ家は「遺族」ではない
 サンテックスには子供はありません。自堕落で蓄財という観念を全く持たなかったので、著作権がもたらすもの以外に遺産と呼べるものはありませんでした。その遺産は、遺言によって彼の母親と妻コンスエロに(作品の管理権はB夫人に)遺されました。家長であるサンテックスが死んだ後、最終的にサンテグジュペリ家を継いだのは次女のシモーヌです。遺族が次々と世を去ってサンテグジュペリ家は断絶し、最後に著作権を継承したのは、唯一生存していたサンテックスの遺族である妹ガブリエルでした。彼女は若くしてダゲイ【フランス語発音では「ダゲ」】家に嫁いでいました。ガブリエルが亡くなるとサンテックスの「遺族」(配偶者・親・兄弟,そして、生まれることがなかった直系の子孫)はいなくなりましたが、財産権は法律の定める順序に従って継承されますから、サンテックスの作品が生み出す経済的産物の 50%(母親の持ち分)は彼の「親戚」であるダゲイ家が手にすることになったのです。【誤解しないでいただきたいのですが、法的には全く正当な権利継承者です。ダゲイ家を誹謗する意図はありません。この項は、「商標権」申請の資格に関する議論のために設けてあります。】
 出撃前夜、遺書を書くに当たってサンテックスが心配しなければならなかったのは、妻コンスエロと年老いた母の生活でした。二人には迷惑のかけ通しでした。彼には重い「責任」があります。可能な限りの財産を二人に残すことが、彼の最大の関心事だったことでしょう。遺言は彼の遺産を二分して二人で分けることを指定しています。サンテックスはガブリエルと仲が良く、深く愛してもおりましたから、積極的に彼女を除け者にするつもりはなかったでしょう。しかし、彼女は貴族に嫁ぎ、爵位は低くとも経済基盤に問題はなく、さしあたって生活の心配をしてやる必要はありません。少なくとも彼は、わずかばかりの彼の遺産をダゲイ家に分与する気は持っていなかった筈です。あまり仲が良くなかった次姉シモーヌにも、遺言では触れておりません。死後50年を過ぎてから、Le Petit Prince の挿絵が、母やコンスエロ以外の人々によってあさましく喰い物にされることなど、思いもよらなかったことでしょう。

先代家長までのダゲイ家の姿勢
 ダゲイ家の先代頭首、ジャン・ダゲイ Jean d'Agay 氏の時代には、Le Petit Prince の挿絵は厳重に管理され、滅多なことでは他用を許されませんでした。たとえば 1982年5月12日付けの手紙で氏は挿絵2駒の複製使用をにべもなく拒絶しています。宛名は 松澤 昌子さん。その前年に死去した弟 茂さんの遺稿集「『星の王子さま』について 」(1982年12月25日発行)に「3本のバオバブ」と「正装した王子」の絵を使用させて欲しいと願い出た書面に対する返事です。その手紙の中で氏は「現在まで、この種の申し出はすべてお断りしてきた」と述べています。それは嘘ではありません。挿絵ばかりではなく、ミュージカル化等にも厳しい制限をしき、ずっと後に、許諾を得られなかった 内藤 濯 さんが憤懣やるかたない風情で、著書中や「星の王子さま」の後書きで繰り言を述べています。ジャン・ダゲイ氏は、Le Petit Prince の雰囲気を壊さないように、頑ななまでの態度で、Le PetitPrince 翻訳本以外への挿絵使用をはねつけ続けました。【前述のように、1986年には日本での商標登録を彼の名前で出願し始めています。他の人や法人に Le Petit Prince のロゴを取られないための防衛措置だったのでしょう。】

ダゲイ家豹変
 代が変わって、フレデリック・ダゲイ(Fr仕屍ic D'Agay,サンテグジュペリ協会 Fondation Antoine de Saint-Exup屍y 会長)氏はきわめて積極的でした。遺産管理組織(SOCIETE POUR L'OEUVRE ET LA MEMOIRE D'ANTOINE DE SAINT-EXUPERY "SUCCESSION DE SAINT-EXUPERY-D'AGAY". Saint-Raphael)を立ち上げ、世界各国で次々と諸登録をしてデザインの使用権を売りまくり、世界中に王子さまグッズが溢れる時代が到来しました。財産を殖やすためならば悪魔にだって手を貸す貴族のお手本を見るようです。原作とは似ても似つかないアニメーション番組が「ル・プチ・プランス」を名乗り、原作の雰囲気を台無しにしてしまうような幼児向けのカードボード絵本までが、あのガリマール社から売りに出されたのです。もちろん、世界中で翻訳複製されました。【岩波書店も発売しています。『原作に照らして、ふさわしい内容ではない。日本語化は行わない』という決断を下すだけの見識を、岩波書店は示しませんでした。Le Petit Prince は「子供向けの童話」と信じていた節があります。内藤訳に毒されていた結果、だけが原因なのでしょうか。】
 「金になるものは何でも売る」のが、ダゲイ家の方針になったように見受けられます。

貴族はハイエナ
 貴族というものは典雅で鷹揚なものだと思っている人がいます。とんでもない誤解です。貴族ほど金に汚くあさましい階級はありません。親族が没落して行くのを見ていれば、自分たちのステイタスは財産があってのことと身に沁みるはずです。一家の家長の一番の務めは財産を殖やすこと、少なくともそれを減らすようなことは絶対にしないことです。サンテックスは幸運にも転げ込んできたサン・モーリス城と付属の財産を喰い潰し、親戚一同から爪弾きされることになりました。貴族仲間の恥さらし、家長落第です。
 貴族にとって最大の関心事は、体面を汚さない形での金儲けなのです。著作権。これほどオイシイ財源は滅多にありません。ダゲイ家はそれを享受してきました。しかし、各国での権利保護期間が消え、戦時加算のため最後まで残った日本においても(箱根のミュージアムに大幅な肩入れをして諸商品の宣伝と売り上げ増加をはかったのに)遂に著作権消滅の日が来ました。「祖国のために死んだ」【ダゲイ家はサンテックス機の捜索や引き上げに一貫して反対してきました。万一にも「自殺」の証拠が挙がるのをおそれたからだろうと、私は「邪推」しています】ことに対する30年間の延長特典が残るフランス以外には、もう著作権はありません【法律を改定して著作権保護期間を死後70年に延長する国が現れはじめました。著作権が生き延びている可能性があります】。それはずっと以前から判っていたことです。甘い汁に目がない貴族様が、手を拱いているわけはありません。商標登録/意匠登録。着々と手は打たれました。地球規模で、実に精力的に権利を押さえ、ダゲイ家は莫大な収入を手にしているはずです。

日本の代理店と諸権利の登録状況
 商標登録の現状は、冒頭に述べたとおりです。
 「星の王子さま」関係の、日本国内における「商品化権」の元締めは、(株)セラムだそうです。フランス本国との連絡および代理業務は(株)フランス著作権事務所が行っているようです。フランス関連の著作権一般を扱うのであって、「星の王子さま」専従というわけではありません。
 (株)フランス著作権事務所は、第二次世界大戦終了後、少し異質な形で日本でのフランスの諸権利に関する事務を代行する会社として開設されました。国家の出先機関ではありませんでしたが、戦後の混乱期であったため、著作権その他業務の取り扱いを黙認され、後になって代理人制度が設けられてその仲間入りをしました。
 (株)セラムはあまり上品な会社ではありません。誠実さに欠けるところがあり、法律的な知識に関しても、充分とはいえない面が多々あるように見受けられます。悪辣なのか、会社組織としてのトレーニングが不十分な素人集団で禁忌事項に不慣れなのか、よく判りません。【なにしろ「 . . . . 下記の内容に該当するサイトからのリンクはお断りさせていただきます。また、その際のクレームは一切お受けできませんので、予めご了承ください。/ ・セラム、星の王子さまクラブの権利を侵害する内容/ ・セラム、星の王子さまクラブ、第三者に対する中傷、誹謗」とホームページで宣言するようなところ。「批判の対象とすることは許さない」というわけです。リンクは禁止できるものと思っていらっしゃるようですが、私のサイトはきっとこの条項に『該当』するのでしょうね。】 後述するように、権利の囲い込みには異様な熱意を示す性癖があります。

「イメージ」は護られはしなかった
 「『星の王子さま』の清冽なイメージを損なわないためには、ちゃんと管理をしてくれるところがあった方がいい」と、銭の亡者たちを擁護する意見を吐く人がいます。彼らに荷担しているわけではなく、本当にそう思っているのでしょう。でも、実情に反します。「イメージを損なわないように管理」しているなんて嘘っぱちです。金になりさえすればどんどん許可しているとしか思われません。粗悪なデザインが世の中に横溢し、競争による淘汰が働かないために悲惨な状態が固定化されています。チャチでキッチュな「星の王子さまグッズ」の数々が信じられない高値で店頭に並んでいる現実は、「商用権」などというものがまかり通っているからに他なりません。「高値」の理由の一つがロイヤリティ(ライセンス料)にあることは指摘するまでもないでしょう。排他独占の使用許可が消えて競争原理が働けば、廉価良品だけが生き残ることが期待されます。
 ネット検索してみると、日本全国に複数のソープランド「星の王子さま」が存在することが判ります。ソープランドが悪であるとは申しません。でも、Le Petit Prince のイメージにはそぐわないでしょう。「権利の管理者」は何をしていたのでしょうね? あれほど精力的にロゴの使用権を取得しまくったのに、多分、「店名・屋号」分野(特に風俗営業業界で)の権利を押さえることは出来なかったのでしょう。「すべての使用」が認められなかった以上、「星の王子さま」イメージのコントロールは不可能です。その時点で、「イメージを保護するための権利保留」という主張は破綻しました。後に残ったのは、あらゆるものから金を巻き上げようという、あくどい金儲け主義だけです。

「商用権」の濫用:「管理者」様への公開状
 著作権の保護によって、十分すぎる利益を享受したはずです。約束された期間が終わって、なおかつ甘い汁を吸い続けようというのですか? 著作権の保護を受けた者は、期限が過ぎた後に別口で商品化権を求めたりするべきではない、と私は考えています。それは権利の二重取りと言うべきものです。それが違法でないことは承知しています。しかし、法の不備を突いて悪どく立ち回ることが「利口なこと」であってはなりません。少なくとも Le Petit Prince の精神を貴ぶことにはなりません。ホリエモン現象 *(若い人は知らないでしょうが、昔はエガワル/江川流という言葉がありました)を王子さまが喜ぶと思いますか? 平気でそのようなおぞましいことをするあなた方は、恥知らずだと思います。
*【「ソレミタコトカ」と言葉が出てしまいます。2006.01.23、とうとうホリエモンは逮捕されてしまいました。裁判の結論が出るのはずっと先になることでしょうが、少なくとも、ルール違反を問われる程の、あくどい行為の数々であったことは誰の目にも明らかになったわけです。】

 「 待ち受け画面が欲しい!」 そんなささやかな願いを、「管理者」は居丈高に叱りつけました。「どのような形であれ、すべての挿絵は使用許可が必要です」、と。個人的な使用と非営利的な受け渡しは、あなた方の権限外です。そんなことも知らないで、「すべての商用権」を管理していたのですか? それとも、重々承知の上で、縄張りを不法に広げようとヤクザまがいの恫喝を喰らわせたのですか? 同じ事はそれ以前にもありました。生徒が行う教室での演目に難癖をつけ、許可が必要だと言いつのったのです。あまりのことに見かねて、教育目的や非営利的なものには制限が及ばないこと、目や耳が不自由な人のためには特例が設けられていること等を指摘して、いったい法律の該当条文をどのように解釈しているのかを糺しました。全く無視されてしまいました。都合の悪いことには答えようとしない、あきれた性癖があるのですね。あちこちのチャットサイトやBLOGで、「自分で描いたわけでもない絵で、濡れ手で粟のボロもうけか。いい商売だな」と嘲られ、「気に入らないリンクは張るなってか! スゲエなこいつら」と呆れられたりしている(おもしろがって、茶化しのリンクを張られている)ことは、当然ご存じでしょう。ネット社会は裸の社会。内輪の話では済みません。みんなが見ているのです。(呆れられているのは管理者だけではありません。そんなことをされても、声を上げない従順なヒツジたちも軽蔑の対象です。)
 法律に違反して、越権と濫用を繰り返しているのはあなた方のほう。不勉強で不誠実なあなた方は、権利の管理者として不適格です。少なくとも、サンテックスの心情を踏み躙る行為であると私は思います。不法な権利の濫用は、厳に謹んでいただきたいと存じます。

 今回も、「『星の王子さま』というロゴも、原作に使われている挿絵も、許可無く使用してはならない」と宣言なさっていらっしゃいますが、私が調べた限りでは、そのような権限をお持ちの兆候は見つけられません。大変失礼ながら、過去の経験に照らして、またも単なる恫喝に過ぎないのではないかと疑ってしまいます。受理された書類の登録番号等、法的根拠を(特に挿絵に関して)明確にお示し頂けませんか? そしてもし、そのような権限を獲得していらっしゃるのならば、すでに受理された申請書類いっさいを取り下げていただくか、少なくとも次の更改時期には更新しないで頂けることを切に希望します。上にも述べたように、そのような「権利」は誰にも与えないことが一番良い方法だからです。パブリックドメインへの移行を宣言すれば、あなた方に代わって利権を貪ろうと、却下されることを承知でダメモトの登録申請をする人は現れないでしょう。サンテックスの心が少しなりとも理解出来るならば、私の願いは聞き届けられるものと期待しております。

挿絵と本文は一体である
 サンテックス自身が描いた挿絵は、独特の画風を持っています。Le Petit Prince を「絵本」と表現してしまう人がいるくらい、あの挿絵は重要な役割を果たしているのです。本文に書かれなかったことが、挿絵の中に隠されています。挿絵があるから、本文に細々と説明しなかった箇所もあります。「雰囲気」もとても重要です。不用意に写真製版した最近の版では、独特の色合いは再現出来ていません。挿絵は物語と不即不離、本文と一体となって Le Petit Prince そのものを構成しています。他の絵では代えられません。 あの絵でなければだめなのです。挿絵と本文を分離することは、あの物語を殺すことです。新しい絵(著作権が成立)を売りに出している会社がありますが、あの作品を全く理解していないからそのようなことが出来るのです。サンテックス自筆の挿絵があってこそ、あの物語は意味を持ちます。二つを引き離さないでください。

挿絵はパブリックドメインに放出すべきだ
 前述のように、「著作権」は、著者生存中はもちろんのこと、その『死後』(=親族や愛人への財政的な遺産として)50年の永きにわたってその権利を保護しています【保護期間を70年に延長しようというとんでもない法案が俎上にのぼっています。別項で論ずるように、翻訳権に関してはせいぜい10年位にしてもらわないと、良質の日本語訳を一生得られない場合が続出するでしょう】。 その利権を享受した上で、尚、骨までしゃぶり続けようというのが商標権の登録です。一旦取得してしまえば、10年ごとの更新を忘れない限り、永久に権利を保持できます。著作権のように一定の時期が来たら効力が消失してしまうようなことはありません。与えられた権限は生殺与奪を握る強力なもの。承認された区分・指定にあたる商品に対しては、オールマイティな効力があります。「金儲け」に関しては、著作権よりも強力です。その強権をサンテックス財団は手に入れました。その行使の実績は、サンテックスが生きていたらどんなに嘆くかと思うほどあさましいものです。「自分たちが描いたわけでもない絵」で巨万の富をかすめ取ろうというあざとさを、恥ずべきものとする感覚は持ち合わせていないのですか?
 既に諸外国では、新しい翻訳が続々と出版され、更に企画され続けています。独自の挿絵を採用するものと、財団にロイヤリティを払ってサンテックスの挿絵を登載するものと、2種類に分かれます。サンテックス以外の挿絵では、内容が物語の筋立てを追うだけで、深みに欠ける恨みが残るのです。仮に、書物以外の諸商品への権利(残念ながら合法的です)を認めるとして、書物に関してだけは挿絵を自由に使わせるべきです。世界中で売れまくった Le Petit Prince。サンテックスの仕事は、保護期間中の収入で経済的には充分に報われたはずです(それを享受したのは、サンテックスが意図した以外の人さえ含まれています)。この上何を望もうというのでしょう。保護期間が過ぎたいま、サンテックスの文と絵を世界中の人々に、その国の言葉で存分に味わってもらうためには、その自由使用を制限するべきではありません。

 今回の、日本における新訳ラッシュに臨んで、挿絵の使用を妨害しよう、あるいは、高いライセンス料をふんだくろうという動きがあります。挿絵の著作権も消滅したのです。少なくとも、Le Petit Prince の翻訳に関しては、挿絵は自由に使用させるべきです。そうしなければなりません。法の不備を突いて不当な利益を得ようとしたり、書物への挿絵の使用を意匠権や商標権で妨害しようと言うのは、法の精神に反するものだと強く主張します。

 

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