挿絵の色
挿し絵はすべて彩色だった?

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 Le Petit Prince の挿絵には、色が施してあるもの(31枚)と、無色のもの(16枚)とがあります。色がないもののほとんどは(線画ではなく)、中間明度の灰色部分を持っています。版によっては、中間明度が飛んでしまっているものがありますが、Reynal & Hitchcock 社の初版で見る限り、すべての絵に中間明度の塗りがあります。あの「ヒツジの箱」でさえ陰影がつけられているのです。無色画は黒鉛筆で描いた絵のようにも見えますが、色がついた水彩画を4色刷りにせず、黒インクのみで刷り上げる無彩色画用の原版を作ったのだと断定して良いと思います。

 サンテックスは、Le Petit Prince の挿絵を描くのに水彩絵の具を買い込み、とても熱心にさまざまな構図を仕上げていきました。印刷には使われなかった多くの原画が残されています。鉛筆で描いた素描もありますが、色を塗るための輪郭線を描いたものばかりで、無彩中間明度の塗りつぶしがあるものは残っていません。すべての絵に色を入れた、または、そのつもりだったと考えられます。
 しかし Reynal & Hitchcock 社は、16 枚の絵を色刷りにはしませんでした。あのヒツジさんやトラさんはどんな色に塗られていたのでしょうね?

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 考古学には「物をして語らしむ」という言葉があります。文字による記録がなかった時代、さまざまな状況は、勝手に物語を創作するのではなく、遺跡や遺物を証拠として、客観性のある説明を試みるのが王道だということです。(「遺物」の倹証をチャンとしなかったために、とんでもなく恥さらしな事件が起きたりもしましたが.........。)

 「ラストシーンに色がないのは、冥界を暗示している」といった類の論議がありますが、この「色がない」理由が、単に印刷コストを節約するためであったら、議論はまったく空回りに終わります。今我々が手にしている物が、サンテックスが意図したことを反映しているか否かは、慎重に検討されなければなりません。
 私は断言します。サンテックスはすべての挿し絵に色を付けていた、と。いつかきっと、サンテックスの描いた原画が発見されて、私の言の正しさが立証されることでしょう。

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 無彩挿し絵16枚。レイナルヒチコック社・フランス語版第1版第1刷より。

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 ウワバミ・呑み込まれたゾウ。ウワバミもゾウも、それぞれの彩色画(ウワバミ帽子,積み重なるゾウ)と同じ色に塗られていたのだろうと推測されます。

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 3匹のヒツジとヒツジ小屋。ヒツジの脚と箱の稜にわずかに陰影がつけられていますが、どのような色だったのかは判断材料がありません。

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 崖の上の王子。王子の服は、彩色画で見られるような、カーキ色または緑がかった水色だったのでしょう。崖と砂漠は、「崖の上の井戸」のシーンと同じだったのでは?

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 望遠鏡と星。色はわかりません。星は黄色だったはず。

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 夕陽見る王子。岩波愛蔵版のカラー挿し絵はよくできていると思います。

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 バラと王子

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 トラとバラ・バラにガラス鐘被せる王子。バラは赤と緑、王子の服はカーキ色または緑がかった水色でしょう。ガラス鐘とトラは判りませんが。王子の服がカーキ色ならばガラス鐘は水色。トラは黄色か茶色でしょう。

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 トンガリ山で物見する王子。王子の服は、カーキ色または緑がかった水色。山襞の影は......。
 カラスはサンテックスが描いたわけではないので、黒そのもの。

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 村の泉。木の葉は緑なんでしょうね。水は水色が順当でしょうが、壁の色は予断できません。

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 砂漠行く王子。王子の服も砂丘の色も、他と同じでしょう。

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 砂漠の星・花・王子。全部、他の挿し絵から推測できます。

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 ラストシーン:砂丘と星。星はもちろん黄色。砂丘も他から推測可能。

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 著作権問題に関わる見解 : この項目では、Renal & Hitchcock 社のフランス語版からコピーした画像を使用しています。以下に延べる理由から、著作権上の不法・不都合は生じないものと信じますが、万一訴えられるような事態になった場合には、裁判を受けて立つ覚悟でこのページを作成しています。実態のない「商品化権」なるものの乱用が目に余りますから、誰かが何らかの形でこれに挑戦する必要があるからです。

 まず第一に、例によってこれは、論議をする上で必要な「引用」です。著作権法で認められた枠内にあります。
 サンテックスの著作権は、彼の死後50年で終了しました。日本の場合、これに戦時加算がありますからまだ終わってはいませんが、このホームページは商品ではありませんから、通常問題になる意味での著作権の侵害には当らないと思います。すなわち、著作権所有者に対する損害がありませんから、民事訴訟上を起こすに足る「相当の理由」がなく、訴えそのものが成立しない(すなわち、著作権侵害に当らない)と考えられます。
 コピー元はレイナルヒチコック社のフランス語版ですから、岩波書店は複製権の当事者ではありません。また、英語版の複製権にも抵触しないので、Katherine Woods さんの翻訳著作権とも無関係です。そもそもここでは本文を引用しておりません。また、「原画」が失われており、レイナルヒチコック社の出版物が事実上の「原画」ですから、ハーコート社の複製権には、この特殊事情にともなう制限があって然るべきであろうと考えます。
 挿し絵をキャラクターとして商標登録または意匠登録しているらしいことは推察していますが、その妥当性については裁判で争う余地があります。この物語の特殊性に鑑みて、挿し絵は本文と同じに扱われるべきでしょう。著作権法による特権を享受した後、その失効後に絵だけを独立させてキャラクター扱いすることは、フェアーなやり方とはいえません。The Little Prince/Le Petit Prince はもはや人類共通の財産なのですから、著作権が終了した後までもこれをしゃぶり尽そうというあさましい企みこそが、法的制限を受けるべきではないでしょうか。

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