一番淋しかったとき、王子さまは
何回入り陽を見たでしょう?

hair line

王子さまは入り陽を見るのが好きでした。
一番たくさん入り陽を眺めたとき、一体何回見たでしょう?
そう。43回も見たのでしたよね。

アメリカへ渡ったばかりの Prince はもっと悲しかったみたいです。
1回余分に入り陽を眺めてしまいました。

 現在の Gallimard 社のフランス語版では43回眺めたことになっています。ガリマール社版から翻訳した 内藤 濯 さんの「星の王子さま」はもちろん43回です。
 なぜか Katherine Wood さん(Wood 夫人は1968年に他界しました)が翻訳した英語版では、44回になっています。この謎を見つけたのは、SASAKI AI さんという日本人だそうです。

44回が正しい のです。

 アメリカで出版されている標準的なフランス語版(これが本当のフランス語初版です。世界で初めての英語版“The Little Prince”もフランス語版“Le Petit Prince”も、共にアメリカの Reynal & Hitchicock 社から出版されました)では一貫して44回ですし、古い Gallimard 版を底本にしたデンマーク語版ではチャンと44回になっています。(Gallimard 1945年版では44回なのです。Gallimard 社の正式の初版である1946年版以降は43回です。)

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 Gallimard 1945年版。 5行目の行末、
下線を引いたのが44回(quarante-quatre fois)の部分。

 王子が Gallimard へ帰ったときは、まだ44回だったのだと思われます。その後すぐに、何らかの事情で1回減ってしまったのでしょう。今となってはどうしてこうなったのか、知る証人は−−−多分もう−−−いなくなりました。

 Le Petit Prince の出版権に関しては、アメリカとフランスの出版元の間で少々もめごとがありました。これはその後遺症かも知れません。

 私はこれを Who-Robbed-of-A-Sunset Enygma と呼んでいます。

 英語が読める人はクロアチアのMark Potocnjak さんの ホームページを覗いて、 詳しい顛末を読んでみてください。


追 記

ガリマール社も44回に

 ガリマール社が、44回が正しいことを認めました。1999年発行の“folio 選集 3200”(ISBN 2070408507,32フラン。日本の大型書店には並んでいます)という小型のシリーズ本では問題の回数は44回になっています。(ガリマール社はこれが1943年に発行されたアメリカ版を忠実に再現したとうたっています)。
 この“folio 選集”は、もともとは“folio junior”というシリーズで発行されたもので、シリーズナンバー100と453の二本立。単独でも、朗読CDやカセットテープとペアでも売られるという、少し複雑な商品構成になっていました。私の手持ちで一番古いものが1979年発刊です。小型ながら標準版と同じカラー挿絵をもっているのです。この挿絵がガリマール標準版とは異なりレイナル・ヒチコック版、つまりサンテックスが描いた本物の挿絵【これについては別項“ホンモノとニセモノ? 2系列の挿絵”をご覧下さい。】を搭載しているので注目していたのですが、本文はガリマール標準版のままでした。すなわち、入り陽を眺めた回数は43回だったのです。
 上記1999年の“folio 選集 3200”では、この回数が44回になりました。今後、標準版も44回に変わって行くと思われます。おそらく挿絵も本物に差し替えられることでしょう。(⇒ 出版されました。ISBN 2070755894 ,80フラン。日本にはまだ入荷していないようです。⇒2000年1月、やっと入荷しました。あらゆる挿絵がレイナル・ヒチコック版と同じになっています。“ホンモノとニセモノ? 2系列の挿絵”最後尾をご覧下さい。) 世界中の翻訳本も順次これに追随すると予想されます。


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