パロディ本

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ポルの王子さま

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カジノ=リブモンテーニュ 作,中田 博 訳,ニトリア書房,1972年3月15日,¥800.-

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 パロディに使われるようになれば、その作品も市民権を得たと思って良い。しかし意外なことに、「星の王子さま」を正面切ってパロディ化したものは多くない。というより、この「ポルの王子さま」がただひとつの例と言ってよいのではなかろうか。

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 あまり上品とはいえない出来映えであるが、内容は「星の王子さま」の筋立てを見据えた上での茶化しに撤しており、本の装丁も、岩波の愛蔵版を忠実にまねている。単独の作品としての価値はほとんどなく、パロディとしてのみ評価の対象となり得る。
 この作品の特徴はふたつある。まず第一には、「ポルノ」と銘打つだけあって、男女の性愛をしつこく前面に押し出していることである。(もちろんこの作品中では「王子さま」も男として、「ねじれパン」のような立派な一物を使いまくる筋立てになっている。とはいえ、昨今のポルノグラフィーの様にベッドシーンの濃厚な描写があるわけではない)。開き直った偽悪的な描写であるため、下品なものとなったことはある意味では残念であった。しかし、この下品さはむしろ意識的に狙ったものと思われる。読み較べてみれば「星の王子さま」の無機質で取り澄ました上品さが、際だって強調される結果となるからだ。そして、「星の王子さま」の、異常なまでの「非性愛性」を明確に指摘することにもなっている。

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 表紙見返しと文中挿絵のひとつ。火山に見えるのは乳首。

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作品中に登場するリブの女王。
ヘルメットを被りゲバ棒を抱えた全共闘スタイル。
王子さまはこの女性とも性交する。

 第二の特徴は、これが出版された時点での「時代性」が顕著なことであろう。若い人々にとっては「歴史」の一齣になってしまった「全共闘運動」の残り香が、ページの端々から立ちのぼる。「反権力」をこれまた茶化す形で「王子さま」にぶつけているのであるが、この点に関しては何を主張しようとしたものか著者の意図は掴みかねる。


 この本の編集者だった方から e-mail を戴きました。プライバシーに触れない範囲で、概要を述べさせて戴きます。

 出版されたのは、何回目かの「星の王子さま」ブームで、女子大生(もう死語ですね。女子大学の学生。男女共学の大学に通う女子学生とは区別していました)が小脇に「星の王子さま」を抱えてキャンパスや街を歩くのがファッションだった時期。編集者は20歳代後半だったそうです。
 出版社名「ニトリア」は、アラビアのロレンスの「智慧の七柱」という本から取ったアラビアの地名だそうです。硬い本を手がける出版社で、この本は異色の存在だったとか。
 著者は、某有名高校で当時国語の教師をなさっており、同時にHというペンネームで小説も書いて、某文学賞にノミネートされたこともある人物です。ペンネームをあげれば、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。ポルノ小説を執筆するのはもちろん、読んだこともないであろう先生にお願いして、書いて戴いたとのこと。原稿を頂いたものの、セックス描写が下手で、やたら失神を繰り返すので閉口したそうです。
 優良図書マークの鹿を馬に変えたのは、子供向けの本を大人が選定することへの反骨からだそうです。
 それなりに話題になり、週間現代が特集を組んで電車の中吊り広告にも名が出たりしたこともあってか、初期の予想に反して2万部もの販売量になりました。お中元としてお客さんに配るために、銀座のクラブからまとまった注文があったりしたとのこと。


 臆病な私は、著作権侵害を避けることにしておりますのでとてもこんなページは作れませんが、勇猛果敢な れざけん さんの「ポルの王子さま」紹介 。非常に詳しく解説されています。

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帰ってきた星の王子さま
Le Petit Prince retrouvé

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 帰ってきた星の王子さま、左から、フランス語の原作,ドイツ語訳(以上ペーバーバック),英語訳,日本語訳(以上ハードカバー)。

Jean-Pierre Davidts 著,メディアファクトリー社,1998年11月10日,123p.,¥1,500.- + 税,ISBN 4-88991-649-0

 作者はベルギー生まれでカナダ在住の童話作家・翻訳家です。この作品を書くにあたって、王子の人物像を変えないこと,全体の構想を変えないこと,もとと同じくらいの長さにすること、を心掛けたのだそうです。
 原書はカナダで出版されたのですが、よほど特殊なルートを通して販売されたもののようで、入手には苦労しました。
 日本語訳は、原作にない特殊な点が多々あります。まず第一に、上の写真で明らかなように、挿絵がまったく違います。日本語訳は挿絵の数が多く、「王子」は青年期に達しているように見えます。原作ではまったくの子供です。
 日本語訳では「星の王子さま」に似せて章番号が振ってありますが、原作にはありません。

 飛行機の代わりに船で難破して無人島にたどり着き、相も変わらず子供のままの「王子さま」に出会う設定です。確かに、またぞろ王子はあちこち旅をして、いろいろとおかしな「おとな」に出会った経験談を身につけています。原作の「説教臭い」欠点を忠実に守っているわけです。
 極めて重大な変更点があります。「女の子」が出てくるのです。しかもその子は、もう旅をするのは止めにして一緒に暮らそうと提案し、薔薇に責任があるという王子に「私じゃ駄目なの?」と迫ります。これは Le Petit Prince では、徹底して避けられた構図です。もちろん、作者はその事を百も承知のはずです。そして、薔薇がコンスエロであることは動かしようもありません。「女の子」は誰なのでしょう? シルビア? それともB夫人? ひょっとしたらアナベラかも...。
 極めて意欲的な作品と言えばいえますが、成功したとは言い難い、と言うのが私の評価です。もし「女の子」が出てこなければ、まったくの失敗作。わざわざ執筆するだけの意味も価値もない内容ですから。

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