サンテックス乗機の残骸は引き揚げられ、それが彼の F5B であることは確認されました。破片は広い範囲に散らばっており、底引きトロール漁場であったことから、引き揚げ場所が本来の墜落場所であるという保証はありません。墜落したのは、下の図に青線で囲った赤塗りの海域、マルセイユ南方のかなり広い範囲の何処かであろうと考えられます。

その日彼が乗った F5B が果たさねばならなかった任務は、グルノーブル方面の写真偵察でした。プロバンス地方は偵察目標に含まれていませんし、マルセイユ近辺を通過する必然性はまったくありません。彼がこんなところに墜ちていた事実は、多くの人々を困惑させる大きな謎なのです。

リッペルト氏の証言するところに依れば、サンテックス機はツーロン上空をマルセイユ方面に向けてゆっくり飛んでいたということのようです。高度差は3000mありました。【未確認です。Le Figaro Magazine には「高度2000メートルを飛行していた」とあります。】 ダイヴして後方に付き、撃墜に要する時間はせいぜい数分間でしょう。「ゆっくり」飛んでいたとすれば、想定される撃墜海域より手前で追いついてしまいそうですが、飛行機乗りがいう「ツーロン上空」は、必ずしもツーロン市街地上空を意味しませんから、撃墜までの位置や時間関係に矛盾はありません。
リッペルト氏の証言が事実であるならば、サンテックスは一体なぜこんなところを、しかも2000mの高度で「ゆっくり」飛んでいたのでしょう? ここは、制空権を持たない戦場なのです。
万人を納得させる説明は不可能です。ただし、多くの可能性のひとつが、存在感を濃くしながら浮かび上がってくることを避けられません。『サンテックスは、誰かが撃墜してくれることを願って、重要軍事施設の上空に身を曝したのだ』と。すなわち「サンテックス自殺説>」です
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